現代自動車 4年間8兆7千億円投資の問題点

現代自動車は、先般発表した経営計画において、向こう4年間で8兆7千億円(81兆ウォン)の投資を行うと発表した。
工場の新設・増設や超高層ビルの建設、ITインフラの拡充など設備投資に5兆4千億円(49兆1000億ウォン)、
研究開発(R&D)に3兆5千億円(31兆6000億ウォン)をそれぞれ投じるという。
韓国国内への投資額が全体の約4分の3に上る。

<新本社ビル投資>
2014年9月ソウル市の韓国電力の敷地を1兆1000億円(10兆5500億ウォン、鑑定評価額より3倍で購入)で落札した。その土地に105階建の超高層ビルの新本社ビルを建築するというもの。
新本社ビル建築の総投資額1兆1,000億円(10兆ウォン)の計画で、土地建物の総投資額は実に2兆2,000億円(20兆55百ウォン)に達する。

<<生産工場投資>>
<中国>
中国第4工場を北京市に近い河北省常州市に建設する。生産規模は30万台で第2・四半期に着工、2016年上半期に完成、下半期には量産に入るという。
また、中国第5工場を中国内陸部の重慶に建設する。生産規模はここも30万台で、今年第3・四半期に着工し、2017年第1四半期に量産に入る計画である。両工場ともその後工場拡大を念頭に置いた投資となっている。
<韓国内>
エンジンなどの工場も韓国内に蔚山、華城、瑞山などのエンジンや変速機の工場新築・増築
以上、生産部門においては、完成車生産工場施設に24兆5000億ウォン、部品施設に13兆4000億ウォンの計37兆9000億ウォンを投下する。

<研究投資>
南陽研究所、環境試験棟の新築、瑞山走行試験場の新設も計画している。
新車などの開発投資に3兆円(27兆1,000億ウォン)、部品開発に4,300億円(3兆9,000億ウォン)投入する。
以上とは別に、PHV・FCVなどの次世代エコカーの開発に1兆2,500億円(11兆3,000億ウォン)を投じる。スマートカーにも2,200億円(2兆ウォン)を投じ、自動運転や車載IT技術のレベルを引き上げるという。

以上が現代自動車の2015年~2018年までの投資計画である。

自動車も中国勢が市場を虎視眈々と狙っている。今のところ、まだ中国勢の技術力が劣っているが、上海汽車や東風汽車など上位10位までのグループが市場シェア89.7%で2,107万台生産していることからもわかるとおり、技術的な蓄積は今後とも進む。
現代自動車のGDIエンジンは三菱のパテントエンジンであり、中国純国産車の多くに三菱製のエンジンが搭載されているのは、日本勢にそれほど技術力があるということかもしれない。

中国政府は、中国勢の自動車メーカーが合弁事業で利益を稼げ、また外資系の高品質の車両価格が安く純国産では対応できないのも事実、中国国民も品質面から外資系車両の購入をはかるという悪循環に、苛立っているのが現状。
中国製も性能と価格がマッチしてくれば、後はデザイン勝負、真似は韓国に劣らない中国の得意技だろう。その時には、品質面からやはり市場を駆逐されるのはサムスンに見られるように韓国勢だと思われるのだが・・・。

中国の自動車グループの動向も注目されるところではあるが、現代自動車の急激な生産施設拡大は市場が拡大する限り問題ないだろうが、市場が縮小した場合やいろいろな問題の発生でも大きなリスクを伴う。現代自動車は2013年燃費偽装問題で大きな痛手も受けている。
また、カントリーリスクも考慮する必要がある。ロシアの為替安はロシア市場で第2位の現代グループにも大きな影響を与えた。売上台数が800万台と初めて大台をクリアしたものの、このロシア問題と米国における大幅値引きにより営業利益は前年比マイナスとなっている。ロシアでの為替安が続けば、ロシア工場で製造した車両を輸出に回すというが・・・。主要部品は韓国から送っている。

足元の韓国でも、現代グループはこれまで80%以上のシェアを有していたが、欧州経済の不振で欧州市場が縮小、欧州車の行き場が、FTA(2国間自由貿易協定)締結により韓国へ向かい、現代グループが初めて80%の販売シェアを割り込んでいる。

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2014年中国の自動車販売
中国勢
757
独系
394
日系
309
米系
252
韓国系
176
仏系
72
商用車
379
合計
2,349
・単位:万台、中国汽車工業協会発表
出荷台数。前年比6.9%増。
現代自動車の2014年12月期決算

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