タカタ製エアバッグク問題とホンダ

タカタは同社製のエアバッグに基本的な問題があった訳ではないとして原因究明にいまだ苦慮している。それも旧式の2005年までに搭載されたエアバッグである。
2009年5月、アメリカオクラホマ州で発生した事故では、エアバッグが作動した際に金属片も飛散。運転していた女性の頸動脈を切断した(何回もマスコミ登場、公聴会にも登場した)。

その原因で一番疑われているのは、1994年に工場建設されたメキシコ製である。当時、急速にエアバッグ需要が増加し、世界各地に工場を新設したタカタであったが、特にメキシコ工場は北米の巨大市場向けに需要が旺盛で、工場としては異例の増産体制に入っていたとされている。しかし、熟練工や指導者も限られ、品質管理に問題があったと当時のメキシコ工場の社員たちはロイターの取材で指摘している。

そうした中、欠陥のエアバッグが取り付けられ、それが問題を発生させ続けているという。それもアメリカでも高温多湿地帯の南部で発生しているとして、ホンダとタカタはアメリカ南部でのリコールを優先させ、リコールに踏み切った。

だが、日本でも最初にホンダが2011年12月2日、インフレータが異常破損のおそれがあるとして、ホンダカナダ製のラグレイト(逆輸入車530台)をリコールしている。
ロイターによれば、2008年11月インフレータ問題により4205台をアメリカでリコール。アメリカでは続いて2011年12月に、91万7300台リコールしていた。日本では上記のとおり、日本製造車はそれまでリコール対象とはなっていない。
日本製造車では2013年4月11日、トヨタ・ホンダ・日産・マツダおよびトヨタとホンダのアメリカ逆輸入車の計734,126台(6,143台の逆輸入車含)がリコールとなった。当時のトヨタのリコール原因となった事故報告では室内焼損2件となっていた。このときのリコール台数は、日本を含め全世界で400万台に達していた。その後は今年に入り、リコール台数は増加するのみとなっている。
こうしたことから、原因はメキシコ工場の品質管理上の問題だけではないことが判明してくる。また、高温多湿地帯での事故が多く、製品と高温多湿との因果関係が問題視されている。日本で発生した原因は・・・・。

<タカタ自身の問題>
タカタはこうしたインフレータの問題が2008年からありながら、原因究明に行き着かず、未だ不明としている点にある。そのため、リコールもメーカー任せにしており、こうした動きに、アメリカの報道機関が根掘り葉掘り調べ周り、タカタのことを悪意を込め紙面に書き散らしている。当然、新聞社としては、日本車たたきにもなり、日本勢からも米国の3大メーカーからも広告収入が増加することになり、より悪意が篭ることになっている。それに応えるかのように、このままでは殺人自動車だ、利用しないようになど極端な報道もなされていた。
そうした報道に、米道路交通安全局も動き、米メーカーの自動車族が大問題として捉え、公聴会まで開催されるも、タカタは原因不明とし、リコールは自動車メーカー任せと発言し、全米リコールを表明せず、アメリカ当局を激怒させてしまった。
そこで、ホンダは急遽、リコールをこれまで問題が発生していた高温多湿のアメリカ南部から、米道路交通安全局の要望どおり、全米に拡大すると発表した。
ロイターによると、タカタには、過去の納品管理記録も一部ないものがあるといい、リコール遅延理由の一つのように報道していた(タカタには未確認)。
しかし、現実問題は、交換用のインフレータをいくら増産したところで、早期に改修することは困難な状況でもある。

<リコール用インフレータの生産の限界>
エアバッグは、世界でオートリブ(スウェーデン)とタカタ、それにダイセル(日本)の3社がほとんどのシェアを有している。
タカタでは、急遽リコール用のインフレータ(ガス発生装置)を製造しているが、月産35万台、更なる増産でも年初から45万台としている。こうしたことを受け、ホンダはダイセルとオートリブに対して、代参品のインフレータの生産を緊急依頼することを決定した。
世界で1700万台ともされるリコールに、インフレータ生産が間に合うわけではない。
すでに、タカタ製の当該のエアバッグを搭載しているトヨタなどの自動車メーカーは、「全車両、予防的措置として、助手席用エアバッグインフレータを良品と交換、回収して不具合原因調査を実施する。なお、部品が供給できない場合には、暫定措置として助手席用エアバッグの機能を停止するとともに、助手席サンバイザ部に当該エアバッグが作動しない旨の警告を表示する。」として全車両リコールに踏み切っている。

<自動車産業は今でもアメリカのプライドが最優先されるアメリカ>
これまでもロイターの下図のように、リコールを行ってきていた。しかし、今年に入り、問題が急拡大、国交省の指導もあり搭載していた各社がリコールに動いた。それをきっかけに、アメリカで当問題がクローズアップされ、死者まで発生しているとニュースに流れた。こうした報道に米道路交通安全局(NHTSA)が動き、自動車族議員から下院(国会)でも取り上げられ、大きな社会問題に発展した。
以前のトヨタたたきと同じ構図だ。

<アメリカ自動車族の魂胆>
事あるごとに日本車たたきをするアメリカの自動車族議員であるが、昨年にはGMのスイッチ問題が大々的に取り上げられた。運転中にスイッチが突然切れ運転不能状態陥り、これが原因で13名が死亡した報道もなされていた。しかし、自動車族議員の貢献があり、今年3月を境にピタリと当問題は沈静化した。この問題は開発段階から不良が認められていたとの証言があり、GMは開発当時やその後のモデルチェンジでも改善しなかった開発担当者および責任者たちを全員首にした。当然1000万台ともされるリコールも実施した。
ところが、アメリカ人特有のBuy American心理が作用し、米国自動車市場では販売台数が落ちることもなく、逆にそうした行動から販売台数を大きく増加させている(この間対象車の乗り換えに対しては社員価格で提供したことも功を奏した)。GMも族議員もこれまでに当問題を完全払拭させる事に成功した。
それも当スイッチ問題が蒸し返しさせない好都合なタカタ製エアバック問題が浮上した。
そのため、安全局や族議員たちは、強硬姿勢で公聴会に臨んでいた。

<依存するアメリカ市場>
日本の自動車勢は、アメリカでの販売に依存している。中国では反日暴動をきっかけにドイツ勢にその市場を大きく奪われ水を開けられ、景気低迷が続く欧州では韓国勢(2社)より販売台数が落ちている。東南アジアでは日本勢は強いものの絶対的な市場がまだまだ限られている。日本では消費税増により急落しているのは周知のとおりだ。
こうした国内外市場の環境にある日本勢は、景気のよいアメリカを差し抜いては経営できないのが実態だ。
そこに貿易軋轢が発生してくる。特にホンダはアメリカでの販売比率が高く、1,525千台(2013年)販売し、同社全体の4,323千台の35.2%に達している。
日本勢はアメリカで5,786,580台販売、米国市場シェアも37.4%達している。ただ、アメリカやカナダ・メキシコの3ヶ国(いずれもFTA提携国)で多く生産しており、文句を言われる筋合いはないが、アメリカの国民感情および自動車族議員たちにより常に批判の対象とされている。

最後に、タカタはアメリカ当局を怒らせては何にもならない。2005年には問題があったことを米子会社内で把握されていたとも報道されながら、未だ原因究明ができないとは、安全を司る企業としては失格であるかもしれない。早急に原因究明が望まれるとともに、今後の製品開発で生かされる品質基準と調査研究機関の設置が望まれる。

リコール
ロイター作成資料

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