中国政府 クライスラーとアウディを独禁法違反で処分へ ベンツも対象

高級自動車のBMWが、中国市場で米国価格の2.5倍(日本価格の倍)で販売され、中国共産党系の新聞が、メーカーとディーラーがボロ儲けしているとやり玉に上げていたが、今回、中国政府が独禁法違反で制裁するのは、米国のクライスラー(伊フィアット系)とドイツVW系のアウディだった。

中国政府は6日、アメリカとドイツの自動車メーカーや日系の複数の自動車部品企業が中国の市場で独占禁止法に違反した疑いがあるとして、近く処分すると発表した。

中国の経済政策を統括する国家発展改革委員会は6日、アメリカの自動車メーカー、クライスラーとドイツの自動車メーカー、アウディが中国市場で独占的な行為を行っていたとして、公正な競争を定めた独占禁止法違反の疑いで近く処分すると発表した。

当委員会は、違反の具体的な内容は明らかにしていないが、地元メディアは「自動車の付属品や補修のサービス価格を不当に高く設定していた」などと伝えている。
また、日系の自動車関連企業12社についても、部品の取引価格に関する独占禁止法違反の疑いで調査を終え、近く処分するとしているが、企業の名前や違反の内容は明らかにしていない。
このほか、ドイツの高級車、メルセデス・ベンツの中国国内の販売店などの調査も進めているという。
これについて、国家発展改革委員会の担当者は会見で「中国の自動車市場における競争の秩序を守り消費者の利益を保護するためだ」と述べている。
中国政府は7月にもアメリカのIT企業、マイクロソフトの中国法人を独占禁止法違反の疑いで調査していて、経済成長のため市場の役割をより重視する改革を進める一方で、国内の産業界にも配慮し、外国企業の活動に監視を強めている。
以上。

車については、中国市場の販売が拡大する中、国産メーカーの車両が売れず、中国政府は痺れを切らしている。中国大手メーカーも開発に多額の費用を要する自社製品の開発と販売より、提携の外資メーカーの分を生産販売する方が、より利益が取れるため、自社車両の販売強化は政府向けに限定的なものとなっているのが実情だ。中国の独立弱小メーカーの車両は、デザインこそ欧米車を真似て見栄えはよいが、燃費・排ガス・品質問題を抱え、売れていない。

一方、自動車部品は、アメリカにおいて、日本企業が談合カルテルにより多額の罰金・課徴金の支払いを課せられた自動車部品メーカーが主となるものと見られる。
ただ、それらの自動車部品メーカーが、中国に大きな生産工場を有していれば、撤退・縮小されれば困ることから、その制裁金は、基地外沙汰の米国ほどにはならないと見られる。日本でもすでに公取委からカルテルにより摘発されている自動車部品メーカーなど対象だろう。
<その他1>
中国が大々的に外資導入を図ったのは、中国企業の育成にあった。そのため、過度に外資系に中国市場を独占された場合、一党独裁国家として調整に乗り出すのは、自然な成り行きだろう。
丁度いい具合に、米国との情報セキュリティ問題や貿易摩擦問題も発生しており、米国からやられた場合、米国に対してやり返す方式をとっているようだ。今回は、それをカムフラージュするため、他国メーカーも犠牲にされる。

しかし、本質は、自国産業・企業の国際競争力の上昇においており、既に造船や太陽光発電モジュール・レギュラーの半導体分野では達成、スマホても世界の市場占有率を大幅に増加させてきている。ますます、こうした領域を広げ、あらゆる分野で世界首位を目指しているのが中国の政策だ。
いずれ、今のアメリカがそうであるように、銭で世界を支配し、漢民族を未来永劫に繁栄させることが政治目的となっている。
これまでは他国を武力支配する時代、これからは他国を経済支配する時代に変遷してきている。

<その他2>
中国では、習近平が政敵旧江沢民一派のパージに成功を納め、そうした一派に共通した巨額不正貯蓄・巨額賄賂などの摘発が末端まで続けられている。
また、政府主導の浪費節約令も昨年末公布され、まず、官公庁・地方政府など公共機関の贅沢一掃をはかった。胡錦濤時代末期には、地方政府には高級車のべントレーなどが並び、幹部の子息がフェラーリを乗り回し、海外で豪遊留学生活を送る始末であった。しかし、習近平政権は、昨年末には、政府幹部の子息全員を留学先から帰国させ、習近平自らも子供を帰国させている。
そうしたことから、超高級外車は公共機関から一掃されたものの、その代わり、高級車のBMWとベンツがバカ売れしているニュースが中国から伝わっていた。
今回、上記2社のほかベンツも処分対象となっているが、ベンツ・BMW、当局はどちらでもよかったと思われる。大好きなメルケルの顔色を見ながら決定したのだろう。

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