2013年中国の自動車販売台数13.9%増の2,198万台

中国の自動車市場は、労賃アップ、また、賃金の高い沿海部から賃金がまだ安い内陸部へもマイカーブームが波及、販売台数は、前年比13.9%増の2,198万台に達し、初めて2,000万台を超え、5年連続して世界首位の市場となった。
中国汽車工業協会では、2014年も前年比1割増の2,400万台前後に拡大すると予想している。

<廉価な大衆車主導・内陸部にカーブーム拡大>
中国の自動車販売市場は沿海部から内陸部へ拡大してきている。特に、内陸部でニーズの高い低価格帯の大衆車の躍進にある。乗用車の販売ベースでは、中国ブランドのシェアが約4割、残りが海外勢となっている。
内陸部の大衆向けに、中国勢に倣い、海外勢の各社も低価格帯をラインアップさせている。VWは中型車「ジェッタ」の廉価グレードを6万8,800元(約120万円/17.19円)、フォードも6万5,000元(約112万円)の小型車「フィエスタ」を投入して人気を集めている。
日本勢もホンダが、中国仕様の「クライダー」を11万4,800元(約200万円)で投入し、月販1万台を販売しているが、ラインアップでは100万円前後(6万元前後)から中国モデル「シーモ」「ジェイド」を投入、低所得者層や内陸部での販売強化を図っている。
トヨタもタイで発表した「ヴィオス」を昨年11月から2割程度値下げし、7万元を切る価格から販売して伸ばしている。

<VW9年ぶりにGMから首位奪還>
VWに至っては、前年比14%増を果たし、これまで首位だったGMを僅差ながら9年ぶりに再逆転して319万台を売り上げた。
2013年のVWブランドの世界販売台数は、前年比3.4%増の593万台、いかに中国での販売台数が大きいか物語っている。

<GMも過去最高・高級車売れる>
一方、GMも、前年比11.4%増の316万0,377台の過去最高を更新している。
ブランド別には、シボレーが過去最高の前年比8.5%増の65万2,077台。うち、2011年の中国でのベストセラーカーである小型セダンの「クルーズ」が、前年比6.1%増の24万6,890台、コンパクトカーの新型『セイル』、21万3,075台。
ビュイックブランドでは、15.7%の大幅増の80万9,918台。うち小型セダンの『エクセル』が、前年比6.9%増の29万6,183台。『エクセルXT』と『エクセルGT』も両車計で17.9%増の20万4,274台。
成金の購入幅拡大により大型高級車のキャデラックブランドも売れ、66.6%増の5万0,005台。クロスオーバーカーのSUV『SRX』が2万6,897台、新型セダンの『XTS』が、2万0,101台を販売している。
GMの販売領域は広いが、売上台数から見ると、やはり小型車が売上台数を伸ばしている。

<日本勢>
トヨタの中国での販売は、前年比9.2%増の91万7,500台となった。多目的スポーツ車(SUV)人気の波に乗り、8月に新型を投入した「RAV4」などが牽引したほか、先述の「ヴィオス」も販売好調となっている。
ほか日本勢では、日産が前年比17.2%増の126万6,200台、先述のホンダは26.4%増の75万6,882台と、そろって過去最高を記録している。
(トヨタは米国向け大型車開発・工場建設など米国に傾注しすぎ、中国のモータリゼーションの波を読み違え、中国への本格参入が遅れたため、後塵を拝している。また、中国でのニーズに対するマーケティングも後手後手となっていた。ホンダの中国進出は早かったが、やはり米国市場に傾注しすぎていた)

<独BMW・VWの最大市場は米国抜き中国>
スキー場で骨盤骨折の大クラッシュをしたメルケル首相が中国に擦り寄るのは、欧州経済の悪化の中、自国経済を支えている自動車産業の中国での活躍にあり、間接的には中国と仲良くなった韓国にも媚をうっている。
ドイツ勢にとって恵みとなったのは尖閣問題での日本勢の撃沈、その間隙を最大限利用してのことだ。
高級車のBMWは、中国では米価格の3倍で販売しても売れ(日本価格の2倍)、中国では成金のステータスシンボルとして、高いから売れるという神話さえ作り出している。
中国での生産を年末20万台体制にしたばかりだが、前年比19.7%増の37万0,713台を販売している(米国での販売台数は前年比8.1%増の37万5,782台)。
(約半分が輸入車となっており、BMWにとって儲かって仕方ない中国市場となっている。米国の中小のカー販売店がBMWに無許可で輸出して大儲けている分も数万台あるという)
BMWでは、中国での現地生産をさらに拡大する方針を打ち出している。

メルセデスベンツも世界で、前年比10.7%増の146万台となった。当然中国での販売が牽引している。CクラスとSUV車のGLAが売れている。
なお、高級車ブランド別では、VW傘下のアウディも中国での好調から11.2%増の157万台となっている。

<日本勢のリスク>
アベノミクスを牽引する安倍首相の個人的なパフォーマンス、今回はデモさえも抑え込んだ習均平だが、今後も、習均平の政治的な安定しだいということになる。
12月末の中国の共産党系新聞は挙って、暴動などのおりには日本車に、乗車しているだけで破壊されたりするおそれが高く、日本勢の自動車販売に大きく影響すると書き立てていた(1月の日本勢の販売状況も見る必要がある)。
(中国政府も日本企業に対する再度の暴動が、欧米諸国から嫌中にされる恐れも高く、また海外勢の対中投資が減少していることもあり、これ以上外国との摩擦を避ける動きにあった。ただ、対日強硬派の末端の共産党員や軍部も多く、押さえ込む限度は限りなく狭まっている。共産党系新聞は、安倍首相に対して「安倍」と名指ししていたことからも伺える)

<中国自動車市場の課題>
中国勢の全体に占める売上台数も約4割に達している。すでに輸出をしている。海外有力メーカーとの合弁により、日進月歩で技術水準を上げており、また、低価格生産では、海外勢のように当局の目は光らず、コストを下げる力は途方もなく有している。
しかし、5年10年乗るにはまだ不安はあるが、大陸的な考え方は、目先よければ、先々は仕方ないで済まされることになる(約20年前勤めていた会社の現地子会社が、中国産の自動車を中国で購入、即故障、購入の自動車会社へ持って行ったら有償での修理だった。現在では海外に習ったサービスを提供しているようだが・・・)。

現実は、中国勢の勢いに、海外合弁組は、矢継ぎ早に低価格車を投入して販売戦争に突入しており、内陸部での市場拡大はあるものの、売れても儲からない時代にすでに入っている。
中国で中国勢と戦っても、所詮、消耗戦、BMWのように高級路線での展開が無理でも中級レベルのところで確固たる地位を築き上げることが必要となる。(米国ではトヨタのカムリ、ホンダのアキュラのような存在だ)。どうしたレクサス?

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