EV車/心臓ペースメーカ等が誤作動の恐れで注意喚起/厚労省

電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド自動車(PHV)(=電気自動車)の充電装置は、8時間から14時間程度を時間を要し、主に、長時間駐車する自宅、事務所等のプライベートエリアで設置・使用される普通充電器と短時間での充電が可能で、高速道路のサービスエリア、ガソリンスタンド等のパブリックエリアに通常設置されている急速充電器がある。
これまで携帯電話,電子商品監視装置(EAS)、IH式家電等から発せられる電磁波による心臓ペースメーカ等の植込み型医療機器への影響が検証され、注意喚起が行われているが、今般、電気自動車の充電器より発生する電磁波が植込み型心臓ペースメーカ等に及ぼす影響について検証した。
この結果を踏まえ、厚労省は、植込み型心臓ペースメーカ等の使用上の注意を改訂し、患者及び医療関係者等に対し、広く注意喚起することにした。

植込み型医療機器については、植込み型心臓ペースメーカ(IPG)、植込み型除細動器(ICD)、除細動機能付植込み型両心室ペーシングパルスジェネレータ(CRT-D)及び除細動機能なし植込み型両心室ペーシングパルスジェネレータ(CRT-P)を試験対象とし、5社25機種(IPG及びCRT-P 5社13機種,ICD及びCRT-D 5社12機種)を選定して試験した。

試験の結果
IPG及びCRT-Pで、急速充電器及び普通充電器によるペーシングパルスの抑制や非同期のペーシングパルスの発生等の影響が認められた。
一方、ICD及びCRT-Dでは、急速充電器及び普通充電器による影響は認められなかった。
IPG及びCRT-Pの試験結果の概要は以下の通り。
(1)急速充電器によるIPG及びCRT-Pへの影響
IPG及びCRT-Pが単極設定の場合に,12機種に影響が認められたが、双極設定の場合には、影響は認められなかった。また,観測された影響は,充電器から遠ざかることでなくなる可逆的なものであった。
最大干渉消滅距離の最大値は、53cmであった。また、最大干渉消滅距離の最大値を観測した機種において、同試験条件下で、さらに,試験機種の感度を最大感度から一段階低く設定した場合にも影響が認められた。

(2)普通充電器によるIPG及びCRT-Pへの影響
Mode 2普通充電器、Mode 3普通充電器の両試験下で、IPG及びCRT-Pへの影響が認められ、IPG及びCRT-Pが単極設定の場合に、最大10機種で影響を確認。Mode 2普通充電器での試験下では、IPG及びCRT-Pが双極設定の場合でも、2機種で影響を確認した。
これらの普通充電器による影響は、いずれもIPG及びCRT-Pが最大感度設定の場合にのみ認められ、充電器から遠ざけることで影響がなくなる可逆的なものであった。また、最大干渉消滅距離の最大値は12.5cmであった。

以上の検証試験において、IPG及びCRT-Pについては,急速充電器並びに普通充電器による影響が認められ、最大干渉消滅距離として,急速充電器にて53cm,普通充電器にて12.5cmが確認されました。この結果から、IPG及びCRT-Pの使用患者においては,急速充電器には可能な限り近づかず取り扱いを避けること、普通充電器を取り扱う場合には、充電器や充電ケーブルに密着した姿勢を取らないことで、これら充電器の電磁波による影響を回避することが可能と考えられた。
また、急速充電器、普通充電器による影響とも可逆的な影響であり、万一、急速充電器に不用意に近づいてしまった場合や普通充電器に密着する姿勢を取ってしまった場合でも、速やかに急速充電器から離れること、体から普通充電器を離すことにより影響を回避することが可能と考えられる。
厚労省は、IPG及びCRT-Pを取り扱う製造販売業者に対し、これらの添付文書の「使用上の注意」欄に以下の内容を記載し、電気自動車の充電器による影響について注意喚起するともに、既にこれらの機器を使用している患者に対しても、患者手帳への注意事項の追記や情報提供文書の配布等により注意喚起を図るよう指示している。

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