プリウス急減、テスラ株急落 原油安が直撃!エコカー離れ進むアメリカ

米電気自動車メーカー、テスラモーターズの株価下落が止まらない。7日連続の下落に続いて8日目も10ドル以上値を下げた。テスラの過大な売上予測と、原油安で高級電気自動車の需要が先細りになるというウォール街の見通しとのギャップ。
テスラの株価は、9月の最高値から25%以上も下落。今月9日までの7日間では14%の下げ幅を記録した。あまりにも急激な下がり方に、専門家の間からはテスラの長期の業績見通しが甘すぎたのではないかという声が出ている。
同時にテスラの売上不振も明らかになった。

電気自動車関連のニュースサイト「InsideEVs」によると、高級セダンタイプの「モデルS」は11月1200台売れたが、9月に比べると販売台数は減少した(テスラは他の自動車メーカーと違って月間の販売台数を公表していない)。
原油価格が5年ぶりの安値を付ける中で、消費者が自動車に求めるものが変化しているという見方もある。
「この原油安で、『普通のガソリン車を買ったほうがトクだ』と考える」と、香港の証券アナリスト、オーレ・ホイは話している。「電気自動車に乗り換える動機は弱くなった」
その一方で、テスラ製の7万5000ドルから10万ドルもする高級車の購入を考える富裕層は、ガソリン代のことは心配していないという見方もある。
むしろテスラのカリフォルニア州にある工場だけでは世界中からの注文に対応しきれないため、売上が一時的に落ちている可能性もある。
今回の下落は、ノルウェーで販売した「モデルS」のドライブトレイン(動力をエンジンからタイヤに伝えるシステム)にトラブルが見つかったため、1000台をリコールしていることにもある。
一方、トヨタが誇るエコカー「プリウス」の販売が米国で急減している。アメリカはトヨタにとって最大市場であるだけに痛い。
以上、米紙参照

<トヨタプリウスの場合> 原油価格は9月から激落
トヨタは2015年1~3月の日本国内での自動車生産を減らす。ハイブリッド車(HV)が主な対象となる見通しで、当初計画に比べて約2万台減るもよう。
原油価格の下落を受けて北米市場でガソリン車の人気が相対的に高まり、燃費の良さが特徴のプリウスの販売が振るわないことにある。
プリウスは同クラスのガソリン車と比較して価格的には大きな割り増しとはなっていないが、効果的なモデルチェンジも行われておらず、新鮮味もなく、燃料価格の下落の波に飲み込まれてしまった。

トヨタでは国産320万台としている14年度の生産計画が、国内市場も4月の消費税増税から振るわず、未達になる可能性が出てきている。
プリウス3代目ZVW30型は2009年から販売されている。トヨタでは6年をフルモデルチェンジの周期としており、15年か16年にはフルモデルチェンジ車が販売されるはずだ。ただ、自動車全体の市場が拡大している時期の6年は、流行り廃れが早く、長過ぎではないだろうか。カムリのように外観だけでもフルモデルチェンジすれば・・・。

今回の燃料費の下落は、大量消費国のアメリカにおけるシェールガス革命が根底にある。また、欧州経済と中国経済の低迷で需要が大幅に落ちており、原油価格が今年8月の100ドル台から61ドル(12月10日)まで約40%も下落している。ガソリン価格も連動して当然落ちている。(残念ながら日本は円安で相殺され、15%程度の値下がりにとどまっている)
それに連れ、プリウスの販売台数7月(1月からの累計)は、前年同期間比▲11.0%減の127,776台(月平均182千台)、8月は前年同月比▲14.3%減の23,437台と前年同月比の落ち込みが大きくなり、9月は20位以内(14,918台)に入らず不明、10月も20位(14,455台)内に入らず不明、11月も20位(14,949台)内に入らず不明と急激に販売台数を落としている。

アメリカでのトヨタ全体の販売台数は11月までの累計で、前年同期間比5.6%増の2,158,714台と堅調であった。ガソリン車併用モデルのHV売上台数は不明だが、HV専用車のプリウスは燃料価格の下落の影響をモロに受け減少しているのがわかる。
ただ、テスラのモデルSは高級車グレードあり、プリウスは大衆車との違いはある。

アメリカでは、経済の好調から、燃料大量消費の(SUV含)ピックアップトラックが乗用車より多く売れており、更に9月からはその販売に拍車がかかっている。日本勢の乗用車も前年比維持といったところであるが、SUV車の販売は増加しており、全体的にプラスとなっている。
アメリカは、昔からエコ意識は限られ、CO2排出の減量各国目標を定めた京都議定書にもサインしなかった唯一の先進国でもあった。巨大ハリケーンが襲おうと巨大竜巻が襲うと、環境意識には乏しいのが現実であり、自動車販売台数にもそうした意識が作用して、エコカーの売上台数は大きく落ち込んでいる。

この状態は、アメリカを除く世界経済の停滞の調整局面から来年もこうした傾向は続くと予想されており、原油価格は少々のブレはあっても上がりそうな環境ではない。原油安は、需要減と一定の供給のバランスが崩れていることに起因している。
また、シェールガスが世界各国でも生産開始されており、しばらくは生産過剰状態が続くものと見られる。
だが、石油輸出国機構=OPECが生産調整を採択すれば2割高くらいにはすぐにでもなる。
こうした中でもアメリカのシェールガス(シェールオイル)産出量は過去最大となっている。開発に莫大な投資を行っていることから、その投資回収に価格が下がれば量拡大で臨んでいるようだ。

OPECとしても、治外法権となっているシェールガス産出量を組み込まない限り、今後とも同じように激落する可能性もある。また、アメリカは、シェールガスを2017年にも輸出を解禁する動きであり、そこでも原油価格の頭が押さえつけられるようになる。
欧州経済と中国経済が復活しない限り、原油需要の大きな伸びは期待できない状況となっている。

アメリカで販売された自家用車の大別
 
8月
9月
10
3ヶ月計
シェア
小型トラック
818,825
665,746
685,082
2,169,653
52.7%
    シェア
51.6%
53.4%
53.5%
 
 
乗用車
767,190
580,260
596,231
1,943,681
47.3%
 
1,586,015
1,246,006
1,281,313
4,113,334
100.0%
・小型トラックには、主なピックアップトラックのほかにSUVなども入る。
 
 <WTI原油先物価格週足推移>8月中ごろから極端な下落
1212_05
<原油高は世界経済回復頼み>
2013名目GDP/IMF
順位
国名称
10億USドル
シェア
 
1
アメリカ
16,768.05
22.4%
好調
11
カナダ
1,826.77
2.4%
 
北米計
18,594.82
24.9%
 
2
中国
9,469.12
12.7%
 
27
台湾
489.09
0.7%
 
中国台湾計
9,958.21
13.3%
低迷
4
ドイツ
3,635.96
4.9%
 
5
フランス
2,807.31
3.8%
 
6
イギリス
2,523.22
3.4%
 
9
イタリア
2,071.96
2.8%
 
13
スペイン
1,358.69
1.8%
 
17
オランダ
853.81
1.1%
 
20
スイス
650.43
0.9%
 
22
スウェーデン
558.95
0.7%
 
24
ポーランド
517.71
0.7%
 
25
ノルウェー
512.58
0.7%
 
26
ベルギー
508.28
0.7%
 
欧州主要国計
15,998.90
21.4%
低迷
3
日本
4,898.53
6.6%
低迷
黄色計
49,450.46
66.2%
 
世界のGDP
74,699.25
100.0%
低迷

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