6月黒煙でトヨタ車2万3千台スス付着被害 新日鉄住金名古屋製鉄所

6月22日、愛知県東海市にある新日鉄住金の名古屋製鉄所で、大量の黒煙が排出された火災事故で、トヨタ自動車の船積み場に保管されていた新車2万3000台にススなどが付着し納車が大幅に遅れている。
製鉄所構内で停電が起きたため、コークス炉から出るガスを、その場で燃焼させる緊急措置をとった結果、大量の黒煙が排出される問題が生じた。
黒煙は、製鉄所の北側にあるトヨタの船積み場にも大量に流れ、トヨタによると海外向けの2万台と、国内向けの3千台の合計2万3千台の新車に、ススが付着するなどの被害が出ているという。
トヨタは、車の清掃作業を行っているが、海外向けで1週間から1ヶ月程度、国内向けで最大で3週間程度納車が遅れるという。このためトヨタは、新日鉄住金に対し賠償を求める方向で検討している。
一方、製鉄所によると黒煙が排出されてから、近くの住民から「車などにススがかかった」という複数の苦情が製鉄所に寄せられているという。苦情の具体的な件数や詳しい内容について明らかにしていない。

同製鉄所では、今年3回目の停電事故で、いずれも黒煙騒動があり、1月、第1回目に発生した停電と黒煙に対して、東海市や愛知県の消防当局が、徹底した講じた改善策の検証と検査を実施し、再稼動させていたら、2回・3回とこうした問題は発生しなかった。
老朽化した名古屋製鉄所の電気系統を徹底的に改善する必要があった。
新日鉄住金に対する愛知県と東海市の頭の上がらぬ情けない姿勢と新日鉄住金の驕りが、今回のトヨタに対するように高い代償を払うことになった。

新日鉄住金名古屋製鉄所の報告
<1回目>
1月17日)(金)午前11時50分頃、弊社名古屋製鐵所構内において、自家発電所変電室内での異常により、構内で停電が発生しました。その対応として、コークス炉ガスをコークス炉上で燃焼させたため、大量に発煙いたしました。近隣住民の皆様をはじめ、関係各位に多大なご迷惑、ご心配をおかけいたしましたことを深くお詫び申し上げます。

<2回目>
1月20日の停電事故は、1月17日の停電事故の復旧過程において、別の電源系統にて過電流が発生し、電源系統の損傷を防ぐ保護回路が自動的に働いたことにより発生した。この停電の影響で1月17日の停電と同様に燃焼放散を行い、その際大量に黒煙が発煙した。

<電事故の原因と再発防止策について>
4月14日、本年1月17日および1月20日に発生いたしました停電事故において、大量の煙が発生し、近隣住民の皆様をはじめ、関係各位に多大なるご迷惑、ご心配をおかけしましたことを改めて深くお詫び申し上げます。
事故の原因および再発防止策について以下の通りご報告いたします。
なお、本内容につきましては、本日、東海市および知多市に対しご報告を申し上げております。
今後、地域、社会の皆様からの信頼回復に向け、再発防止に全力で取り組んでまいります。

1. 事故原因について
(1) 1/17停電事故
1/17の停電事故は、当所の自家発電所内に設置された遮断器(大型ブレーカー)の一つにおいて地絡・短絡(ショート)が生じたことにより発生しました。この停電の影響でコークス炉ガスを次工程に送るためのガス排送関連設備についても停止したため、コークス炉ガスを無害化するためにコークス炉上で燃焼(燃焼放散)させ、その際大量に発煙いたしました。
その後、弊社および遮断器メーカーにて当該遮断器の分解調査を行った結果、遮断動作用の空気を介して遮断部の絶縁体内面に湿分や異物が付着したことで、絶縁機能が失われ、地絡・短絡(ショート)が生じたとの推定を得るに至りました。

2回目 1/20の停電事故は、1/17の停電事故の復旧過程において別の電源系統にて過電流が発生し、電源系統の損傷を防ぐ保護回路が自動的に働いたことにより発生しました。この停電の影響で1/17の停電と同様に燃焼放散を行い、その際大量に発煙いたしました。
1/17に事故が発生した電源系統への負荷を軽減するため、1/20の停電の原因となった過電流が生じた電源系統には通常より高めの負荷を配分していました。その状態において、事故の復旧過程で大型モーターを起動したところ、設備起動時は通常の稼働時より高い負荷がかかることもあいまって、想定を超える電流が流れました。このことが当該電源系統において過電流が生じた原因となったことがその後の調査のなかで判明しております。

2.再発防止策について
(1)今回の停電原因を解消するため、すでに当所に存在していた空気を用いる同じ型の他の遮断器の操作を禁 止するとともに、2014年度中に上記遮断器を空気を用いない真空遮断器に更新します。
また、設備起動時等において、電源系統の容量を超えないよう負荷電流を確認する運転体制の強化を実施する とともに、電源系統の負荷配分の検討手続きを厳格化しました。

(2)さらに、万が一、停電が発生した場合にコークス炉での燃焼放散による発煙を極力回避するために、2015年度末を目処にコークス炉ガス排送関連設備の電源を2系統化し、一方の系統で停電が発生した場合でもガス排送関連設備の運転継続や短時間での再稼働を可能とする対策を推進します。

(3)日常的には、過去より継続して実施してきた設備等の点検や更新等のハード対策を更に強化・継続していくとともに、社員教育や機器等の操作手順の徹底等のソフト対策についても更に強化を図ってまいります。

(4)また、緊急時における行政機関との連携に関しましては、東海市および知多市との間で情報提供窓口およ び責任者の名簿交換を行い、窓口の明確化を図るとともに、本年3月には東海市安全対策本部運営訓練に参画 させていただき、実際に情報伝達の確認等を行いました。今後、地域の皆様への影響が懸念される事態が発生 するおそれが生じた場合もしくは発生した場合は、上記確認内容に則り、行政機関に対する速やかな情報提供 に引き続き努めてまいります。

<3回目>
6月22日(日)午後2時50分頃、弊社名古屋製鐵所構内において停電が発生しました。その対応として、コークス炉ガスをコークス炉上で燃焼させたため、大量に発煙いたしました。
本年1月の停電に伴う発煙に続き、近隣住民の皆様をはじめ、関係各位に多大なご迷惑、ご心配をおかけいたしましたことを深くお詫び申し上げます。
以上、

1度あることは必ず2度あるという。また2度あることは3度ありともいう。問題に対する対策を徹底して行わなければ、同じことは繰り返されるという教訓であるが、日本を代表する新日鉄住金で、こうした事態が生じた。これでは日本企業の将来は危ういものと言わざるを得ない。
安全より生産、地域市民より利益、組織の硬直化、いろいろなことが、今回の3連発の事故により、新日鉄住金に投げかけられている。

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